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2018.12.16

高卒進路指導勉強会〜高卒就職のこれまでとこれから〜

人生が長期化し、技術の変化も激化した社会において、これまで高卒者の就職先の大半を占めていた、仕事・職種を仕事人生の中で、同じ形でずっと続けていくことが難しくなってきました。 そのような中で、高卒者で仕事を始める若者が「どのようにキャリアを選択していくとよいのか」を考え、実際に高校の授業で生徒が自発的にキャリアを考えることが出来るようようになるワークショップを学ぶ二部構成の勉強会をハッシャダイカフェにて、"教員向け"に開催しました。

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2018年12月16日(日)、高校の授業で生徒が自発的にキャリアを考えることが出来るようようになるワークショップを学ぶ二部構成の勉強会をハッシャダイカフェで開催しました。
株式会社ハッシャダイ 勝山恵一、リクルートワークス研究所兼一般社会法人スクールトゥワーク 古屋星斗、東京都立小山台高等学校定時制課程 井波祐二、ヤンキーインターン卒業生 現在サイバーエージェントグループ株式会社CyberBull勤務 後藤 竜之助が登壇し、高卒就職についてパネルディスカッションで考えました。

AI時代!雇用の質が劇的に変わる!

古屋:「製造業など、現在は人間が手を動かしている仕事も今後はロボットの仕事へと変わっていきます。高卒者の約40%は製造業に就職している現状から、高卒者は”誰でもできる仕事”に就く割合が多く、このままでは高卒者の仕事がなくなってしまうということになりかねません。すでにいつの間にかほぼ消滅した仕事はたくさんあります。」

 

2000年以降見かけなくなった仕事として…
・鉄道の改札で切符を切る人→自動改札
・銀行の窓口スタッフ→ATM、非正規職の仕事
・企業の受付スタッフ→タッチパネル

 

そしてあと10年経つとほぼ消滅するであろうという仕事として…
・製造業のラインスタッフ→ロボットがロボットを作る
・レストランのホールスタッフ→キャッシュレス、オートメーション店舗
・トラックの運転手→無人の隊列走行
・コンビニスタッフ→カメラとAIで無人コンビニ

 

未来のことだけでなく、過去を振り返りながら考えると分かりやすいですよね。
こうしてどんどん、仕事がなくなっていくのです。
しかし、「ジョブ(仕事)は消えるがタスクは消えない。」とリクルートワークス研究所の古屋。
そして、「キャリア作りは仕事選びからできること、したいことや遊びから。」と続けました。
メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用、そしてタスク型雇用になっていく、今後の仕事。
例えば、タクシードライバーという仕事はなくなるけれども、運転、接客、経路選択、清掃などのタスクは消えないということです。
“終身雇用”という言葉は今の若者にはない、こんな時代にどのようにして自分の強みと社会での可能性を見つけたら良いのか…そのサポートができるのは先生や親、そして身近にいる大人なのです。

〜高卒就職について〜パネルディスカッション

〜教員・就職支援会社の視点で社会の変化として感じていること〜
「徐々に学歴社会が薄れていっていることを感じる。」と切り出したハッシャダイの勝山。
続いてヤンキーインターン卒業生で現在は株式会社CyberBullに勤務する後藤は「僕も実際に学歴社会は薄れていっていると思います。それよりも”どのようなことをやっていきたいのか”という部分の方が重要視されているように感じます。」と話しました。

 

〜社会が変化する中で、高卒就職者はどのような仕事人生を望んでいるか?そして従来の進路指導や就職活動をどのように感じているか?〜
勝山:「親に言われたから、先生に言われたから、という理由しかない若者たちが大半。”なぜ自分はこの仕事をしたいのか”・”なぜ自分は進学したいのか”ということを考える力が足りない。きちんと”なぜ”と自分に問いかけることを習慣づけるのが大切だと思います。」
後藤:「確かに僕も先生から”お前の実力だとここだ”と言われた貿易会社に就職しました。でもすぐにやめてしまった。それは本当にやりたい仕事ではなかったという理由も大きいし、大卒者の同期との扱いの格差がすごかったから。」
勝山:「自分がこの会社に入って5年後、10年後にどうなっていたいのかというところをきちんと考えた方が良いですよね。」
古屋:「後藤くん、進路相談の時に先生と話したと思うんですけど、どんな言葉が記憶に残っていますか?」
後藤:「”安定しているよ”とかポジティブな言葉はもらっていたのですが、あまり良い印象ではなかったかもしれません。」
井波:「安定したいと声を揃えて今の若者は言うけれど、社会がすごいスピードで変わっている中で、やっぱり高卒者というのはブルーカラーや介護など国が足りないと感じているところに当てはめられやすいんです。そういう流れで就職した若者たちが10年後に”幸せです”と言っているのかというのはとても考えますし、僕の課題でもあります。とはいえ、大手企業に就職することが安定なのかというところも疑問ではあります。」

 

〜これからの高卒就職者はどのようにキャリアを歩むと良いのか?〜
古屋:「現実的な環境などで高卒者の選択肢が狭まることについて、先生方にも課題とか問題意識ってあると思うのですが…。」
井波:「新卒至上主義というのを取っ払いたいなと思っています。卒業後にどこに進学した、どこに就職した、というのって安心したいからだとは思うんですけれど、2年くらい自分自身の未来について考えるのも良いという風にしたいです。やはり今は、”卒業後2年ゆっくりする”なんて言われたら”就職しなくて大丈夫なのか!?”ってなっちゃってますけれども。」
勝山:「僕も同意見です。高校卒業後に進学か就職の2択しかないのってどうかなと。海外であれば一度旅をしてみてから就職するとかというのも普通ですし、第3の選択肢があっても良いと思うんです。工業高校は就職率が約97%だと聞き、とても驚きました。今の学校は閉鎖的なイメージがありますけれども、徐々に変わっていっていると思うので、今後は第3の選択肢も広がっていくのではないかなと思います。」
古屋:「しかし日本は若者の失業率が低く、それはとても良いこと。失業率が高いと過激派とかそういう方にいってしまう若者も多い。だから就職すること、仕事とマッチングすることが悪いわけではないと思います。」

後藤:「勝山さんの話に少し肉付けすると、僕は工業高校出身なんですけど僕の出身校は就職率100%でした。それは何度も面接に落ちた場合は”お前はここだ。”と必ず受かるようなところを学校から勧められ、受けているという背景があるからだと思います。」

今、教員たちの悩みとは〜Q&A〜

質疑応答として、参加していただいた教員の方々からのQに勝山、井波、古屋がAを答えました。

 

Q:卒業生と半年に2回ほど飲みに行く機会があるのですが、会うたびに仕事が変わっています。仕事に就かずに引きこもっている時もあるようです。仕事が変わるとしても何となくその子自身が自信を持って楽しく働けていたらいいなと思うのですが、その”しなやかさ”のようなものはどのようにしたら身につくのでしょうか?
井波:「まず卒業生と会える、しかも半年に2回も。そういう環境を作っている状態が素晴らしいと思います。何かあったら、学校に戻れるというのはとても大事。」

 

Q:「アメリカでスケボーをしたい!」という生徒がいました。「どういう目的でアメリカに行きたいの?」と聞いても、明確な返事はもらえませんでした。そんな時にどのような声掛けをしたら良いでしょうか?

勝山:「その生徒さん素晴らしいです!今、自分がやりたいことがアメリカでスケボーすることであると。今の若者ってやりたいことがわからない子がたくさんいるので、やりたいことがあることがまず素晴らしい。僕ならば、アメリカに行く日程や戻ってきた時にアメリカで過ごした期間での気づきや学びを一緒に振り返ります。挑戦するからこそ、失敗して、失敗するからこそ、学ぶんです。」

井波:「うちにもいます。アメリカに行ってバスケをしたいと言った子。我々はまず、”どうするの!?”って思うじゃないですか。だから意見を聞いて色々と彼らの伴奏となってあげる。でも突然”夢が変わりました!”っていう場合もとても多い。(笑)だから、そこはこちらにもモヤモヤが残らないようにしっかりと話を聞くことが大切だと思います。もしくはアメリカではないけれどバスケ関連の仕事を紹介してみる、そうなると彼にはバスケ=アメリカだったかもしれないけれど、バスケ関連の仕事はこんなにもあるんだと選択肢を広げてあげられると思います。」

古屋:「失敗した時に帰る場所があるか、という話を考えて加味することで全然異なると思います。失敗戦略が見られるなら良いけれどそうでない子もとても多い。そのリスクを考えると僕は応援するのはお勧めできませんね。」

強み発見ワーク(ストレングス・スピーチ)

自分の強みをグループのメンバーと協力しながら見つける”強み発見ワーク”。
ストレングス・スピーチとは自分自身の強みと今後の活かし方を言葉にまとめて相手に伝えることです。
まず、「私の強み!」をテーマに最初に行う1回目の1分間スピーチ、そして最後に行う2回目の1分間スピーチ。
1回目は話せなくても大丈夫、むしろ話せない生徒の方が多いという。生徒に行うためにまずは実践とということで教員の方々に体験してもらいました。
スピーチはグループ内で、発表する際は立って行い、スピーチの最後は「以上です!」と締めくくる。
想像以上に1分という時間は短く、教員の方々も驚いていました。
これを実際に生徒たちがやる場合はおそらく、話せない生徒の方が多いだろうな…という表情。
しかし、1回目と2回目の1分間スピーチの間に、3分間のグループセッションでお互いのスピーチを聞いてみて感じたことを伝え合いました。
「1分間スピーチは、初めは出来ないということが大前提。3分間の振り返りも、生徒たちは振り返ることに慣れていないから恐らくできない子が多いと思う。しかしこれが就職活動なんですよ、ということを伝えることによって、”これだと就職できない!”と思ってもらうことが大事なんです。」と勝山が話すと教員の方々も納得した表情でした。

続けて「何のためにこれをやるのか、これをやったことで得られるメリットをきちんと事前に伝えてあげることもとても重要です。」と勝山。

〜ストレングス・スピーチを学ぶメリット3つ〜
①今まで気づかなかった自分の強みを発見できる
②過去の経験で身につけた強みの将来の活かし方に気づける
③就職活動の自己PRなどにも活用できる

その他にも「強み発見ワークの進め方」、「ストレングス・スピーチの作り方3STEP」、「”強み”を見つけるポイント3つ」などを教員の方々にレクチャーし、この全ての内容を実際に教員の方々に実践し、体験してもらいました。

教員の方々の感想

今回参加してくださった教員の方々に、イベント終わりに感想をひとこといただきました!!
(※似ている感想はまとめて掲載しています。)

「自己肯定感を高めること、自分を内省すること、今までを振り返ること…そういったことを今までしてこなかったので、今後はしていこうと思います。」
「普段会えないような企業の方のお話が聞けてとても勉強になりました。」
「5年後、10年後を考えるということは容易ではなさそうだ。今回登壇された方々が、どのようにして”今”この場にいるのかをもっと深く聞きたかった。」
「ヤンキーインターンの卒業生の子の話も聞けてとても良かったです。生徒の味方になってあげること、その大切さを再確認できました。」
「今日学んだことを生徒たちにも還元していこうと思います。また、生徒にとって学校が戻れる場所であることという言葉がとても響きました。」

このように教員の方々の心にも深くささった今回のイベント。
今後もさらに良い未来にするために、何かしらの形で実現できたらと思っております。
みなさま、ありがとうございました!!

 

Written by tomo.

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